( 最終加筆 03年 10月 30日 )
@塗料の種類
楽器によく使われる塗料●ポリウレタン、 ●ポリエステル ●ラッカー、●OIL、 ●天然樹脂(うるし) ●ニス 等。
20世紀は化学の時代とも言われ、化学物質がたくさん作られました。今まで地球上に存在していなかったようなもの、自然界にはなかったようなものが人間の力で次々と生み出されてきました。その中にこれからお話する塗料もあります。それにより、人々の生活様式までが大変革したのです。それは人々を幸せにした反面、色んな不幸を招くことにもなってしまったのです。詳しくは安全、環境PAGEにてお話させていただきます。
人々には木製品が水気に弱く何とかしたいと言う思いがあり、そこで漆、つまり天然樹脂塗料なるものが発明(発見)されました。その素晴らしさは今も越える人工樹脂塗料は無いといわれております。この塗料はすばらしい反面、取り扱いは難しく、極々限られた職人世界のものでした。後は●天然樹脂(うるし)の項にて。
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@塗料の種類 ●ポリウレタン、 ●ポリエステル
ポリ、ポリってよく言うけどポリって何?
塗料の種類についてお話させていただきます。その前によく日常生活でもポリと言う言葉を耳にしませんか。ポリ袋とか、ポリ容器とか、そのポリについて塗料のお話に関係あるので述べさせていただきます。このポリというのは高分子化合物、つまりプラスチクスのことなのです。★ポリマーという人もおります。化学の方でよく使う分子記号(通称亀の子)で分子構造が連なった形のものを概ねポリなんとかと言うようですよ。それではポリなんとかと付くものを上げてみてください。私も知っているものを上げてみたい思います。@ポリエチレン(食器、パック、医療容器などに使います。) Aポリエステル( 衣料、繊維 ) Bポリプロピレン ( 梱包に使うPPバンドのことです。)Cポリ塩化ビフェニール、(電気絶縁などに使われていたP C B )Dポリカーボネート( 機動隊、警察官が使う盾、パトライトのカバーなど耐衝撃性の高いものなどに使います。) Eポリエチレンテレフタレート( つまりPET ボトル )Fポリウレタン Gポリスチレン(家電製品 、OA機器の外装SHELL )。 こんなところでしょうか。随分あるものですね。
このポリと名の付くもので塗料によくつかわれるものはポリエステル、ポリウレタンでしょうね。
★ポリマーは重合が済んで固体化したものを言いますが,硬化していない液状のものをモノマーと言います。
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ポリウレタン塗料
この塗料が出来て、はや40数年以上になります。それまでの塗料では不都合を感じている人が沢山いたので、このような塗料が出現したと考えられます。この塗料はA液とB液を混合させ、重合硬化させる2液性のものと、1液性のものがあります。楽器では主に2液性のものが使われております。ラッカーのように溶剤であるシンナーを揮発させて硬化させるものとは異なります。最近、水性のものもあるようです。粘度調整にはウレタンシンナーを使いますが、ラッカー用のシンナーも使えます。硬化までの時間(キュアータイム)が短く、生産性がよいものとして、量産工場で多用されております。大別して、下塗り用(ウッドシーラー)、中塗り用(サンディングシーラー)、上塗り(トップコート用)とになります。( 女性のお化粧に似たところがありますね。この方は詳しくはありませんが。)最近、中塗り用で硬いものが出てきまして、トップコートを使わず、中塗り塗料で仕上げる方法もなされているようです。
塗膜の硬さはラッカーに比べて硬いですが、次に説明いたしますポリエステルより柔らかいです。トップコートは透明感があり、カラーものの発色性に富んでいます。塗膜の肉付きはラッカーより良好ですがポリエステルより落ちます。このことから量産工場では、アコースティック系のものに多く使われております。急いで重ね塗りをしますと、泡が立ちやすく、熟練を要します。重合の時に発ガン性のイソシアネート ガスが発生します。体質に合わない人は、喘息、皮膚炎などアレルギー症状をひきおこします。硬化剤は特に空気に反応し固まりやすく、長期の保存は出来ません。管理に注意が必要です。ATLANSIAでは日頃はこのポリウレタンを主体に塗装をしております。(中断、続く)
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ポリエステル塗料
この塗料は主剤に対し硬化剤(エチルメチルケトン パーオキサイド )(商品名カヤメックとかパーメックなどがある)、硬化促進剤( ナフテン酸コバルト)を触媒としてを使います。
危険性がある劇薬なので取り扱いは厳重にしなければなりません。この塗料が出始めた頃、硬化時間が短く、画期的でしたが、反面、取り扱いが難しく、研磨の時出る塗料の粉が発火して、火災騒ぎが時々ありました。現在のものも、使用者は研磨粉を頻繁に、処理しております。この塗料は厚塗りをして内部のWAX分を塗膜面に浮上させて、空気を遮断して硬化させる組成になっております。厚く塗られた塗膜を機械研磨( ベルトサンダー等 )にて削り落とします。この時、平面性を出すことにより、バフがけでピカッとした艶が出来ます。ピアノやエレキのBODY塗装に非常に向いているといえます。塗膜が硬く、厚塗りが出来ることから、量産工場向きの塗料といえます。硬化促進剤のコバルトが紫色で、この影響により透明性が落ちる為、白系統のトップコートとしては難があります。老化と共に濁った青味が出てきます。一般の小規模GUITAR工房では殆ど使用されておりません。私も現在は使用しておりません。(中断、続く)
★厚塗りとか、肉付きがいいという言葉が何回か出てきますが、本来塗膜は音響面からも薄い方がいいのですが、ポリエステル、ポリウレタン塗料は厚塗りをして、研磨で平面性を出すという狙いがあります。この時の研磨により、厚く塗った塗膜はある程薄くなります。ラッカーも歪みのない、綺麗な平面性のある艶を出すには何回も塗りますので狙いは同じといえます。
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@塗料の種類
●ラッカー
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ラッカーがいいってよく聞くけどどうして?
そう、私はよくこの質問を受けるんです。一口では説明出来ないのです。
先ず
@音響面 A感触とかのフィーリング面 B素材の耐候性,耐久性 C作業性
DMAKERの生産性 ECOST、 等色んな面から考える必要があると思います。
この面はいいけどこの面はいまいちとかがあるので返答に困ってしまうんです。
●ラッカーの問題点 それから20世紀に入ってから、ラッカーが出現するようになりました。これは●硝化綿●なるもで、木製品に多く用いられるようになりました。楽器にも沢山使われました。OLD GUITARと称するものの殆どにこの塗料が使われています。私は以前ミシンのキャビネット工場に勤務しておりましたが,そのとき使われていたのはこのラッカーでした。乾かすのにとても時間がかかりました。CORTINGされたキャビの部板は天井近い頭上を1週間から10日ぐらいハンガーで移動した後サンドPAPERがけのの工程に入るのです。乾きが悪いのでプールしておくスペースは沢山要りました。
@乾燥時間がかかること、A量産の場合、スペースを沢山必要とすること B製品納期がかかること C塗装膜が弱く、傷つきやすいことなどから新しい化学のものに代えられて行く運命になったのです。以後、“ミシンキャビはやっぱりラッカーじゃなくちゃー”という声を耳にしたことはありませんでした。この点はGUITARの世界と違います。
★@一部速乾のものがあるようですが、楽器用では見かけません。@、A、Bは関連しています。
●硝化綿●とは、コットンリンターや木材パルプ等のセルロース原料を硫酸と硝酸の混液で処理して製造するセルロース誘導体の一種です。窒素含有量の高いものは火薬の材料の一部として使用されますが、窒素含有量の低い工業用硝化綿はユニークな工業用材料として幅広い用途で使用されてきました。
工業用硝化綿は各種セルロース誘導体の中では高い塗膜強度、表面硬度を有しており、乾燥性や顔料分散性にも優れることから、主として塗料やインキの材料として使用されてきました。国内市場ではこの2分野向けが全需要の8割を占めていますが、この他にもマニキュアなどの化粧品原料や磁気テープ/カードの磁性塗料原料など幅広い用途に使用されています。( 旭化成株式会社 )
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ラッカーが一番楽器にいいと言う記事を時々見かけます。その背景や疑問点を考えてみたいと思います。
★米国ではラッカー以外、規制が厳しく、許可にならないとも言われております。となるとラッカーが一番良くなければ困りますね。(米国産のは日本のものと比べ、サラサラの低粘度で、肉ずき性はあまりありません。)
★ガレージ MAKER(この表現は差別的であまり好きにはなれませんが)はこぞってラッカーがいいといいます。また。ラッカーをいいと言う人で、ポリエステルや、ポリウレタンなど色々使った経験を持っている人は少ないというか居ないに等しいことです(MAKERのお話、特殊な入手経路等から判断)。ラッカーがいいと結論つけをするにはやはり色々使って、総合比較を論じて欲しいと思います。
★ラッカーの厚塗りとその他の塗料のうす塗りではどちらが音響面でよいのでしょう。私の場合、ラッカーのスプレイは5回からなんと15回くらいします。厚塗りを必要とする場合も有るのです。仮に、塗料がいいとしても塗装の方法や上がった状態は問題にならないものなのでしょうか。
★ラッカーは塗膜が柔らかいから音響的にいいと言うことであれば、どの位柔らかければよいのでしょうか。ゴムのように柔らかな塗料だってありま。柔らかいとミュートがかかってしまいます。この辺のところは曖昧なんです。ラッカーは経年変化で、どんどん硬くなり、そのうちに塗膜にクラックが入ってしまいます。これは明らかに老化現象で、 硬度3H〜4H位?の硬さになるようです。それでも音響的によいのでしょうか、それとも、この硬化進行現象は益々音響的に良いのでしょうか。柔らかいから音響的にいいと言うことであれば、明らかに、ある期間でいい時は終わりと言うことにならないでしょうか。
★ヴァイオリンはニスを使います。同じ弦楽器のGUITARは何故ニスが一般化していないのでしょう。ヴァイオリンは何故ラッカーを使わないのでしょう。
★ラッカーが一番いいとしたら、どうして塗料MAKERは研究費をつぎ込み新しい塗料を開発し、次々と新製品を世に出して来るのでしょう。ラッカーが一番いいとしたら、その必要は無いような気がしますが。
こうして考えると疑問は尽きませんませんね。
ラッカーがいいと言う理由の整理★GUITAR を作る立場の人は、塗料が入手し易いこととか、★作業が簡単で、密閉さえ良ければ何年も★保存できるから等ではないでしょうか。( ポリウレタン、ポリエステルはそうは行きません。小口の入手は難しいですし、扱いは主剤,硬化剤、硬化促進剤などの配合作業があり、取り扱いが面倒で、複雑です、あまり保存性はよくありません。気がついたら固まっていたなどのことは時々あります。)それから、★音響的にいいと言われていること。( 権威ある実験DATAをみたことはありませんし、40年もGUITARの仕事に携わっていて恥ずかしいことですが私自身、厳密な実験をしたことはありません。)それから★補修性がいいことも有ります。部分修正などとてもしやすいです。これはポリエステル、ポリウレタンより勝っています。最後に★FEELINGといいますか、感覚的な面でしょうか。色々理屈無しで、僕はなんとなくラッカーの艶や、感触がいいんだ,ほっといて欲しい。という人も居るでしょうね。
私の結論。ラッカーを前時代のものと軽視はしません。扱いやすいし、色々理屈っぽいことも言わなくても評価が定着しているので、説明無しですみます。しかし、音響的に良いという確証には至っておりません。今後も、使い方を工夫してまいりたいと思います。NET受講の皆様も巾広い知識を持って判断することを望みます。都合よく書かれた記事などには惑わされないことです。そして、素朴に疑問を持ち続けることが大切と
考えます。何時も心に
どうして?という気持ちを持っていてください。
ラッカーについてはここで一先ず終了です。